バットケースに宿る魂
- JIROKEN

- 6月16日
- 読了時間: 3分

こんにちは
秩父木の家専門店 夫婦で営むJIROKEN工務店土屋賢次郎です。
4年ほど前
息子が、元東京ヤクルトスワローズの選手からサイン入りのバットケースをいただきました。
その時、私は思わず言いました。
「こんな貴重なもの、もったいなくて使えないなあ。」
すると、その選手は笑いながらこう言いました。
「ガツガツ使ってください。その方がうれしいです。」
その言葉が妙に心に残りました。
だから息子は、その言葉どおりガツガツ使いました。
雨の日も、暑い日も、うれしい日も、悔しい日も。
気が付けば4年近く。
数え切れない練習と試合を一緒に戦ってきました。
そして、おとといの試合後。
大勝したにもかかわらず、息子が今にも泣きそうな顔でやってきました。
「大変なことになった……。」
「大事な……大事な……バットケースが……。」
見ると、ケースの先端に大きな穴。
バットが顔を出してしまうほどの大穴です。
私は言いました。
「こりゃあ、もう限界だな。」
「ここまでよく使ったよ。新しいの買おうか?」
すると息子は少し怒ったような顔で言いました。
「何言ってるの?」
「これは大事なバットケースなんだよ。」
「あの人にもらったんだ。」
「いろんな思い出もあるんだ。」
「どうにか修理できない?」
私はその言葉を聞いて、なんだかうれしくなりました。
物を大切にしているからだけではありません。
もっと深い何かを感じたからです。
このバットケースは、もう単なる「物」ではないのです。
いただいた時のうれしさ。
初めて試合に持って行った日のこと。
勝った試合。
負けて悔しくて泣いた試合。
仲間たちとの時間。
一緒に戦ってきた日々。
そんな思い出が、ぎっしり詰まっている。
息子は、その思いを大切にしていたのです。
そういえばグローブもそうです。
4年前から使い続け、何度も手入れをしながら大切に使っています。
考えてみれば、息子はあまり「新しいものが欲しい」と言いません。
なぜだろう。
そう思った時、ふと心当たりがありました。
我が家のプリウス。
気が付けば18年選手です。
もちろん故障しないという理由もあります。
でも、それだけではありません。
長い時間を一緒に過ごしてきたので、もはや家族のような存在。
相棒のような存在です。
「そろそろ乗り換えようかな。」
そう簡単には思えません。
もしかしたら息子は、そんな親の背中を見て育ったのかもしれません。
家づくりの仕事をしていると感じます。
本当に良い家とは、新しい家ではありません。
思い出が積み重なった家です。
柱の傷。
子どもの落書き。
家族の笑い声。
そういうものが積み重なって、家は「住まい」から「我が家」になるのだと思います。
さて。
まずはバットケースを修理しようと思います。
新品には戻らないでしょう。
でも、それでいい。
傷跡もまた歴史です。
思い出です。
物を直すのではなく、
そこに宿った思いを守るために。
私は昔から思っています。
良い道具には魂が宿る。
そして、たくさんの思い出を背負った物にも、きっと魂が宿るのだと。
息子の大切な思い出が、これからも一緒にグラウンドへ行けるように。
そして、いつの日かこのバットケースを見ながら、
「あの時、穴が開いて大騒ぎしたよな」
と親子で笑える日が来るように。
物を大切にするとは、
物の向こう側にいる人や、そこに刻まれた思い出を大切にすることなのかもしれません。



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