秩父の工務店
秩父・木の家専門店、夫婦で営むJIROKEN工務店の土屋賢次郎です。
突然ですが、家を建てるというのは、木を組み立て、屋根をかけて、「はい、完成!」で終わるものではありません。
むしろ、お引き渡しが終わってからが本当の意味での「お付き合い」の始まりです。
先日、あるお客様からお電話がありました。
「JIROKENさん、すみませんが、ちょっと相談が…引き戸が最近重たくて...」
その声を聞いた瞬間、私の脳裏に「建具の神様」の存在がよぎりました。
なぜなら、家づくりはただの工事ではなく、住まい手との長い関係が続く旅。
建具の調整一つにも、家の呼吸と季節の変化が深く関わってきます。
それなのに、たった一年で…?
これは私たちのミスかもしれない。
その時、横で話を聞いていた妻が、にこやかに言いました。
「じゃあ、私も一緒に行くわ。こういう時こそ、夫婦のチームワークでしょ?」
私は少し驚きました。
日頃、妻は経理や事務の仕事で大忙し。
私がこうした現場のトラブルに出向くときは、いつも彼女が後方支援をしてくれていたからです。
それでも妻は、家づくりに関わることにとても熱心で、お客様との関係を大事にする姿勢を持っています。
翌日、私たちは車に工具を積み込み、お客様の家へ向かいました。
車の中では、次々と対策を話し合い。
「引き戸の調整って、どんな状態かしらね?季節の変化が原因か、それとも…。」
「うん、もしかしたら湿度の影響かも。最近、秩父は雨が多かったしな。でも、今回はただの調整だけじゃなくて、しっかり説明して安心してもらわないとな。」
妻は、私が忘れがちな細かい点にも注意を払ってくれる頼もしいパートナーです。
現場に着く頃には、二人で計画を練り上げ、まるで戦略を組んだ将棋のような気分でした。
お客様宅に到着すると、引き戸は確かに動きが悪く、重たく感じました。
私はすぐに工具を取り出し、調整を始めましたが、妻はお客様と柔らかく話しながら、状況を詳しくヒアリング。
「最近、湿度の変化が多かったですよね。こういう時期は木が動きやすくて、私たちも注意しているんです。」
彼女がそう説明すると、お客様は安心したようにうなずきました。
「なるほど、そうなんですね。建具ってこんなに繊細なんですね。でも、やっぱり重たいと大変で…。」
お客様が笑顔で話し始めたころ、私は微妙な違和感を感じていました。
確かに調整して動きがスムーズになったけれど、何か違う。
完璧ではない気がする…。
結果、最終的には建具メーカーのメンテナンスチームにお願いすることにしました。
私:「すみません。調節して動きがスムーズになったのですが、何かしっくりこない感じがします。後日、メーカーのメンテナンスと一緒に再度訪問させていただいてもよろしいでしょうか?」
お客様は「もちろんです、ありがとうございます!」
と快く承諾してくださり、私は一安心。家づくりというのは、単なる建物を提供することではなく、その後の生活も一緒に作り上げることだと改めて実感しました。
私が技術的な対応を行う間、妻が柔らかくお客様との心の距離を縮めてくれる。
そんな連携があるからこそ、私たちは「心から安心できる住まい」を提供できるのだと思います。
帰りの車の中、妻がふとつぶやきました。
「今日みたいな対応を大事にしていけば、お客様もずっと安心して暮らしていけるね。私たちができることって、家を建てるだけじゃなく、その家での生活を支えることだもの。」
その言葉を聞いて、私の心に温かいものが広がりました。
家づくりは、ただの仕事じゃない。
妻と二人三脚で、お客様と一緒に歩む人生の一部なんだ、と。
家も、人も、愛情と手をかけて育てるもの。
お客様との関係も、夫婦の絆も、これからも丁寧に育てていきたいと思います。
それでは、また次回のブログでお会いしましょう!
Comments