三宝良し
- JIROKEN
- 1月30日
- 読了時間: 3分

秩父の山々に囲まれた静かな場所に、知る人ぞ知る「民宿三宝」があります。
鳥居をくぐった瞬間、まるで時間がゆっくりと流れ始めるような感覚に包まれました。
築200年の古民家。
太くて黒光りする柱と梁、低めの天井が生み出す落ち着いた空間。
歴史の重みを感じる骨董品の家具が並び、そこに座るだけでまるで江戸時代にタイムスリップしたかのようです。
こんな特別な場所でいただくランチは、一体どんな味がするのだろう。
期待に胸を膨らませながら、料理が運ばれてくるのを待ちました。
この日、いただいたのは
秩父名物の豚丼&わらじかつに、お母さんの手打ちそば、天ぷら、手づくりこんにゃく、自家栽培野菜のサラダ、そして手づくりデザート。

運ばれてきた瞬間、目を奪われる。
湯気の立ちのぼる豚丼は甘辛いタレの香りが食欲をそそり、わらじかつの衣はカリッと揚げられて黄金色に輝いている。
お母さんが心を込めて打ったそばは、手仕事のぬくもりを感じる素朴な美しさ。
そして自家製のこんにゃくや野菜、デザートまですべてが丁寧に作られた、
まさに「秩父の恵みフルコース」でした。
このボリュームとクオリティで、お値段なんと1,600円!
「これで利益、出るんですか?」と、つい店主に聞いてしまいました。
店主は、笑いながらこう答えてくれました。

「正直、利益はほとんどありませんね。でも、家族経営なのでやれてるんですよ。自分の家で作った野菜を使ったりして、少しは利益になりますけどね。」
そして続けて、こんな言葉をくれました。
「利益を考えたら、やらない方がいいのかもしれません。でも、お客さんが笑顔になってくれるのが、何より嬉しいんです。」
その言葉に、じんわりと心が温まりました。
どんなに素晴らしい料理でも、作る人の想いがこもっていなければ、ここまで心に響くことはない。
この店の料理は、味だけではなく、店主とお母さんの愛情が詰まっているのです。
食べ終わる頃には、お腹いっぱいのはずなのに、なぜかまた食べに来たくなる。
店主の笑顔、お母さんの優しさ、そして築200年の古民家が醸し出すぬくもりが、すべてを包み込んでくれるから。
帰り際、店主が「また来てくださいね」と言ってくれた。
その一言に、私は確信しました。
きっとまた、この奇跡のランチを味わいに来る日がくるのだと。
それにしても、こんな豪華なランチがこの値段とは…。
店主、計算間違えてませんか?
「利益はほとんどない」と言いつつ、もはやボランティアに近いのでは?
「この値段でこのクオリティって、まるで江戸時代の物価設定じゃないですか!」
と言うと、店主はニヤリと笑って一言。
「じゃあ、次回は『かごで来店』でお願いしますね。」
秩父に訪れたら、ぜひ味わってみてください。
そして、店主の優しい笑顔とともに、心まで満たされる時間を楽しんでください。
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