父から娘へ
- JIROKEN
- 7月15日
- 読了時間: 2分

秩父・木の家専門店夫婦で営むJIROKEN工務店の土屋賢次郎です。
今日、現場に行くと、大工さんが一人、黙々と壁のボードを張っていました。
近くで見ると、きれいに張られたボードがところどころ仮留めのままになっている。
「あれ? 珍しいな。」
普段なら一気に仕上げてしまう大工さんなのに。
気になって声をかけると、大工さんは少しだけ笑って、
「後でちゃんと留めますから」と一言。
なんだか様子が違う。
理由を聞いてみると、普段はぶっきらぼうなその大工さんが、少し恥ずかしそうに、視線を外しながら教えてくれました。
「実はな、娘がこれから現場を手伝ってくれることになったんだ。俺がやった方が早いんだけどさ、あいつにやらせてみたくてな。大工の仕事の楽しさを感じてほしいんだ。」
そして、ぽつりと続けました。
「できれば、大工を継いでほしいんだよな。」
その言葉を聞いて、胸がじんわりしました。
この大工さんは、いつも現場で娘さんに大きな声を張り上げている人です。
怒鳴ることも多いし、職人の世界に甘さはありません。
でも、その背中には、自分の手で刻んできた誇りがあります。
どんなにきつい仕事でも、自分が生きてきたこの道を、娘に伝えたい。
同じ木の匂いを感じてほしい。
同じ工具の音を聞いてほしい。
そんな父の願いが、壁の仮留めにそっと込められていました。
たぶん娘さんが現場に来たら、大工さんはこう言うでしょう。
「これ、やっとけ!」
それだけ。
きっと余計なことは言わない。
でもその一言には、「ありがとう」も、「頼むな」も、「お前ならできる」という信頼も、そして「いつか分かってくれよ」という父の願いも、全部詰まっている。
不器用だけど、温かい。口下手だけど、まっすぐ。
家は、こういう職人さんの想いでできています。
木を刻む音の中に、家族を想う音が混ざっているんです。
私は、そんな人間くさい仕事が大好きです。
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